【満月動物園「レクイエム」】「ラストはある意味崖の上」【May 金哲義 (座長・作・演出・俳優)】

スペースドラマ

戒田さんの作品はずっと不思議な世界だった。
氏にどういう始まりがあって、どんな作品に影響を受けて、どうやって今に辿りついたのだろうか?
ありきたりの単語で申し訳ないが、ホントに「独特」だなぁと思っていた。
「レクイエム」を観ていて、独特の戒田さんの世界観を拝見しながら、僕は今作品が戒田さんの脚本ではない事に気付いた。
そうだ。劇団鹿殺しさんの丸尾さんの脚本だった。
鹿殺しさんは僕が拝見させていただく前にブレイクされて東京に進出されたので、物理的に鹿殺しさんの作品を観れていない。
だからこの作品を鹿殺しさんで上演された時の「色」がどんなんだったかわからない。
それでも気付くまでずっと戒田さんの作品だと観てたのは、やはり演出の手腕なのだなぁと、その独特をしっかりと持たれる氏に羨ましさを感じた。

以前よりもグロく残酷な表現に耐性が薄れてしまった。
ホラー映画が大好きだったけど、いつ頃からか、そろそろ「苦手」と言ってもいいゾーンに迫ってきている。
耐性が薄れた今に拝見できてよかったと思う。
耐性が強ければ、そこに込められている「恋」をもっと軽く見ていたかも知れないから。

「崖の上のポニョ」が僕は結構大好きなんだけど、あの映画は津波を扱った事で賛否両論が生じ、そして震災の後に改めて批判されたのも読んだ事がある。
僕は「津波」という手段はさておき、ポニョが宗介に会いにくる場面が好きだった。
フェミニズムを尊重する世の中、こんな言い方もいけないのかも知れないけど
「女の子って、好きな人に会いたい時には、世界をひっくり返してでも会いにくるよなぁ」
と、ちょっと思春期を思い出してキュンとなったのを覚えている。

今回、会いに来る対象が戎屋海老さんなんだけど、ラストを観ていて、彼女の「恋」を知る。
「愛」じゃない。
「愛」は責任が必要だけど「恋」はまず責任を投げ捨ててこそ始まるから。

そのために取っ散らかった「責任」が散乱したままなのは、老教師にかかっている。