【May 「ハンアリ」】風の民【無名劇団 中條岳青】
金さんの握手は、強い。
初めてお会いしたときからずっと。
私は握手する度に思う。
負けじと握り返すこの手に、
同じだけの強さが宿りますようにと。
その強さとは、信念のことかもしれない。
Mayの舞台は、とにかく走る。
その姿は皆、力強く美しい。
走り切った瞬間、思わず拍手しそうになる。
そしてふと気づく。
舞台上の役者たちは虚構を生きていない。
いつでも、そこに生身の人間がいる。
Mayの舞台は、痛快だ。
民族などの繊細なテーマを取り扱うとき、
私たちは真面目になりすぎるきらいがある。
表現には責任が伴うことを知っているから。
貧困も無知も断絶も笑いとして昇華させて、
心の底にきちんと落としてくれる。
Mayの舞台は、叙事詩だ。
一人の人間の歴史を、丁寧に紡ぐ。
一つの家族の歴史を、丁寧に繋ぐ。
楽観でも悲観でもない優しい眼差し。
こんなふうに生きられるわけはない、
でも、生きてみたい。そう思わされる。
Mayは、風の民だ、と思う。
潮風のような厳しさと、
そよ風のような優しさで
舞台を生き生きと、縦横無尽に駆け回る。
怒りも悲しみも喜びも、そこにあって。
そして風のように去っていく。
二時間超の大作であっても、
終わってしまうのが寂しくなる。
そんな舞台、なかなか観られない。
Mayは憧れであり、希望だ。