【満月動物園「レクイエム」】 赤黒い青春【三村優里花(遊劇舞台二月病)】

スペースドラマ

2006年に上演された伝説のホラー演劇、OFFICE SHIKA PRODUCE「山犬」を元にアレンジを加えた本である。

「山犬」は以前映像で観たことがあった。山犬が猫に変更されたり女優向けになっていたりもするが、密室ならではの重苦しい空気 / 狂気は共通している。
舞台上には爽やかな少女の歌声となんとも言えない禍々しさが同居する。10代のオンナノコは怖い。外からは楽しそうに光って見えて、グループの中では空気の読み合いや悪口が蔓延している。一度癪に触るともうダメで、根に持ってみたり周りを巻き込む状況はよくわかる。そのくせ好きな男の前では光って見せるし、その気になれば命懸けでなんだってやってのける。
リーダーに逆らえなくて現れた毒は行き場を失い溜まり続ける。その毒がぐつぐつ煮込まれ、10年煮込まれ、肉がたっぷりのドロドロのカレーとなる。
青春は短い。青春は一瞬。
青春は美しい…。そうだろうか。その良さを超えるほどの暗い面もきっとある。美化されない思い出も。
猫と人間の友情、カレーを食べて妹の意思を継ぐ姉、未来を生きていくことよりも価値のある美しいものは学校の外にあるように思った。