【満月動物園「レクイエム」】感想【広瀬泰弘】

スペースドラマ

とても残念な作品になった。これは戒田さんにとっても、劇団にとっても画期的な野心作なのだ。新しいチャレンジを提供してくれた「鹿殺し」の丸尾丸一郎の台本を、生かしきれなかったのが悔やまれる。ロマンチストである戒田さんの優しさが、この残酷なドラマの毒を殺いでしまったのが、敗因だ。10年前の事件をどう引きずることになるのか。女子高生たちの想いと、教師の困惑。それが、10年の歳月を経て、今もくすぶり続けることの恐さ。監禁事件を通して、今、彼らがどうなるか。3人の狂気をもっとおどろおどろしく描くべきだったのではないか。なのに、そこには徹しきれない。別にここでスプラッターが見たいわけではない。だが、簡単にはいかない彼女の「過去」の痛みと向き合うことで、見えてくる「今」が痛切に伝わらないことには作品として完結しない。