【コトリ会議 「あ、カッコンの竹」】感想【広瀬泰弘】

スペースドラマ

この薄暗い舞台がいい。舞台正面へと突きだしているような2本の竹もいい。暗さは、夜の竹藪が舞台となる芝居だから当然そうなるのだが、それにしても、暗い。役者たちの顔もはっきり見えない。でも、それがおどろおどろしいものにはならない。それどころか、死を象徴する竹の音(カッコン)には「潔さ」のようなものすら感じさせる。要するに、この生と死を巡るドラマはどこにもない世界を現出させるのだ。

そんな迷路のようなこの空間を、いくつかの2,3人が、右往左往する。宇宙人の兄妹。自殺志願の夫婦、職場の先輩後輩。この空間を支配している魔女のような野お母さん(牛嶋千佳さんがいつものように怪演する)と彼女につき従うような2人の少女。

これは童話のような世界。そして、残酷で不思議なお話。生と死の狭間で、漂う彼ら。その交わし合う会話の断片。それらが紡ぎ合うドラマ。作、演出の山本正典さんは迷いなく、この世界を造形した。作為的なものを一切感じさせないのがすばらしい。自然体でこの不思議を見せていく。あざとさはどこにもない。だから、すがすがしい。