【無名劇団『無名稿 出家とその弟子』】感想【広瀬泰弘】

スペースドラマ

膨大な原作を上手くアレンジして、ポップで華やかな舞台に仕上げた。僧侶と遊女の恋、なんていう禁断のドラマなのだが、この地味な宗教劇を、古くさい話と思わせることなく、誰もが共感できるお話として仕立てた。

主人公の善鸞を演じた島原夏海さんが凜々しく、とてもいい。父(親鸞)との確執、彼の説得にやってくる唯円(中谷有希)を感化し、彼は遊女との恋に突き進む。親鸞を中心に、このふたりの主人公がそれぞれの想いを胸に秘め、悩み苦しみながら生きる。親鸞という巨人を特別な存在として描くのではなく、自分たちと同じように悩み苦しむ弱い存在として描いたのもいい。

芝居自体は恋愛劇に重きを置く。信仰とは何か、なんていう難しいことはあまり考えなくてもいいように作られてある。でも、お話の核心にはちゃんとそういう一面もある。原作の描こうとするところを、しっかりと踏まえ、独自の解釈でわかりやすいお話として再構築した。

布を使ったダンスシーンをふんだんに取り入れ、袈裟や着物を象徴する衣装も見事で、視覚的にも刺激的な作品に仕上がった。