【無名劇団『無名稿 出家とその弟子』】「○○である」【戒田竜治・満月動物園】

スペースドラマ

こんにちは。満月動物園で演出をしております、戒田竜治と申します。
無名劇団さんの『無名稿 出家とその弟子』を拝見しての感想です。

無名劇団さんを拝見するのは3度目です。すべてスペドラ参加作品で『無名稿 あまがさ』・『無名稿 機械』に続いて、今回の『無名稿 出家とその弟子』を拝見いたしました。

無名劇団さんを拝見していつも感じるのは「全体的に面白い」ということです。なにか、突出して印象に残ったシーンがあるということもなく、突出して印象に残った俳優さんがいるということもなく、全体的に面白い。

鋭いナイフで斬り込まれるようなことはないけど、鈍器でズシーンッと襲い掛かられるような感じ。ドワーフがハンマーで向かってくるような感じ。一緒に観劇した人とも「あのシーン良かったよね」というような話が広がりにくい。けど、作品を通じたビジュアルイメージはしっかり残っている。作品を通じたテーマに関する話題は広がる。

個性的な俳優がワンシーンをかっさらうようなこともないけど、逆に言うとどのシーンも思い出せます。どの俳優さんも作品世界の中で果たすべき役割を果たしている。思い出せない俳優さんもいない。演出と脚本の描く世界観がしっかりしている・バランスが良いということになるんだろうと思うのですが、かといって俳優をコマのように扱っているようにも感じられない。

おそらく、作品世界について演出・脚本・俳優が根っこの部分でしっかりと共有できているんだろうなぁと感じます。んー、でも、暑苦しいチーム感のようなものを強要してこられる感じでもない。『○○でない』という言葉を積み重ねたところに作品があるように感じています。「無名劇団である」という言葉しかないんでしょうけどね。

鋭い切れ味を誇る劇団さんは多いように思いますし、切れ味の鋭さや切り口の新しさを競い合い磨きつづけられていますが、無名劇団さんにはもっともっと鈍器の大きさや重さを増していってほしいと期待させられる作品でした。

満月動物園・戒田竜治