【私とスペドラ】気づいた3つのこと【山内直哉】
隕石少年トースターという劇団の主宰・脚本・演出を担当している、山内直哉と申します。隕石少年トースターは2014年の10周年記念公演をもちまして、活動休止中です。今から書くのは12年前の2005年の話です。劇団を旗上げして2年目という時期に出逢えた演劇祭“space×drama”は、私に3つのことを気づかせてくれました。
應典院は天井が高く、テレビ局のスタジオみたいだったので、クイズ番組のセットを建て込み、新番組の収録に臨む大人たちの奮闘を描き、space×drama 2005の優秀劇団として選出していただきました。その作品は、メッセージ性が薄く、笑いに偏った作品で、コメディーというよりもロングコントだと知人からは言われ、(やっぱり賞を取るのは、社会に問題提起するような作品なのかなぁ)なんて落ち込んでいたので、選んでいただけた時は「こういうコメディーを評価していただけて、すごく嬉しいです」と喜びを爆発させたことを覚えています。至らないところはたくさんあったと思いますが、将来性に期待して下さったのだと思います。身の丈より少し高い評価というのは、それにひっぱられて成長できるもので、評価が賞という形ではっきり表れる演劇祭は、劇団にとって一つの分岐点になりました。
優秀劇団の特典として、次の年のspace×drama2006に特別枠で公演させてもらえたわけですが、その共通チラシに載せた劇団の宣材写真が、物議を醸しだしました。劇団員の衣装は普段着で統一感ゼロ。一人はフラッシュの赤目でターミネーターになっているし、一人は裏ピース(!)していてチャラさがすごいという酷い写真で。実は、稽古終わりに、稽古場出てから、「ヤバイ!写真撮ってない!」となり、「夜やし、背景とかどうすんねん」となって、稽古場近くで見つけたマンションの外の暗い階段で撮ったのです。写真の中にターミネーターがいることや、裏ピースを問題視する余裕もないギリギリの提出。「あのね、こういう、居酒屋の2次会終わりに撮ったような写真はダメだよ」と、打ち上げで静かに怒られました。
演劇祭が終わってからでも、脚本家として気にかけて下さったことは忘れられません。「プロデューサーを紹介してあげるから、舞台の映像資料を送って」と言われたとき、そんな映像資料なんかなくて、慌てて動画編集ソフトを買って劇団のPVを作り始め、結局2週間後に送りました。返事はありませんでした。完全なる準備不足。売れようという意識が足りなかったわけです。劇団PVの編集はその後も、データが消えたり、波瀾万丈で、結局完成したのは、活動休止して2ヶ月後のことでした。
space×dramaという演劇祭は、僕に3つのことを気づかせてくれました。周りに惑わされず、自分が面白いと思うモノを全力で作れば、評価してくれる人がいる。準備をした者だけがチャンスを掴める。裏ピースは怒られる。まあ、それは数に入れないとして、space×dramaに参加して気づいた一番のことは、鼎談企画やこのリレーブログのように、12年経ってもたくさんの人と再び繋がることができるという“演劇祭”の魅力は勿論、「才能とは情熱を持続させる力のことである」とも言われるように、大切なことはふと忘れがちで、それを思い出させてくれる何かが人生には必要で、space×dramaはその一つであったと言うことです。
山内直哉・隕石少年トースター主宰・脚本・演出
space×drama2005・2006参加
山内直哉プロフィール
脚本家・演出家。1978年大阪府生まれ。
1998年、関西大学の演劇サークル「劇団展覧劇場」に入団。オリジナルの脚本を書き始める。2004年、自身が主宰する劇団「隕石少年トースター」を旗揚げ。ワンシチュエーションコメディーを得意とし、間口の広い作風が好評を得る。自劇団の全公演の脚本・演出を手掛けると共に、外部への脚本提供や、ラジオ・テレビ・広告などの仕事を通じて、<面白い脚本とは何か>を追究してきた19年。劇団は10周年記念公演を最後に活動休止。現在は、脚本提供、シナリオコンクールへの挑戦、広告の映像コンテンツの仕事、シナリオ講座の講師をするなど、個人で活動を続けている。
公演情報
公演予定は今のところありません。
今後の情報は、ツイッター(山内直哉:@showmustgoon_nv)をチェックしていただけるとありがたいです。東京を中心に活動中の劇団員、正安寺悠造(Yu-Zo) (@fruity_NYZ)と共に、今後ともどうぞよろしくお願い致します。