【私とスペドラ】―僕自体がスペドラ―【福谷圭祐】

私とスペドラ~スペースドラマ14年の担い手たち

お世話になっております。匿名劇壇の福谷です。

初めてspace×dramaに触れたのは、baghdad cafe’の『ごっこでいいから、手をつないでて』だった。当時、space×dramaのことは知らなかった。たしか、公演チラシに興味を持ったとか、タイトルに興味を持ったとか、ほんとにそんな理由で観に行った公演だった。baghdad cafe’作・演出の泉さんとなんて、まだ出会っていないし。案外、僕にも可愛いところがあるじゃないか。そういえば、劇団員の松原と一緒に観に行った気がする。2010年8月のことだから、当時は劇団員でもない。下手すると、デート気分だったりしたんじゃなかろうか。上演を観れど、「space×drama」のこと自体はほぼ分かっていなかった。

匿名劇壇の旗揚げが2011年5月。『ごっこ~』が上演されていた頃なんて、僕はまだパッパラパー。2009年4月に大学へ入学して、ちょうど一年半くらいか。たぶん大真面目な顔で別れ話とかをしていた頃だと思う。そんな頃があったなんてね。2017年になって、僕は冗談めかして口説いたり、「泉さんにはお世話になっているから」なんて理由で公演を観に行ったりするような、スレた男になってしまったぜ。笑えるよな。

匿名劇壇が参加したのは2013年のこと。理由は分からないけど、その頃にはすでに演劇エリートを自称していた気がする。まだそんなに作品を作ってすらいなかったのに、「今年の下馬評は匿名劇壇が本命」なんておべっかも真に受けたりしていた。どう考えても早い、馬鹿なんじゃなかろうか。しかし、幸運にも優秀劇団に選出していただき、鼻はぐんぐん伸びていった。また別の話だが、AI・HALLの次世代応援企画「break a leg」でも、泉さんから「ブレイクアレグは、スペドラからの流れで、足を折られてしまうジンクスがあるんだよ」と言われていたが、そこで上演した『悪い癖』がOMS戯曲賞で大賞を獲れたもんだから、鼻も伸びる一方だ。ざまあみやがれ、泉さん。いつもありがとうございます。

『気持ちいい教育』という作品を上演した2013年。ラインナップはこうだった。

劇団壱劇屋『SQUARE AREA』(2012年優秀劇団)
ミジンコターボ 『ゼクシーナンシーモーニングララバイ』
かのうとおっさん 『大阪BABYLON』
カンセイの法則 『田舎に住む人たちⓇ』
劇団東京ペンギン 『天王寺:10王子 tennoji’s tenojis』
劇的☆ジャンク堂 『オゾケ・ストロベリィ・ドォルズ/イ―ッ!!』

やはり僕は人間関係をうまく構築していくことが苦手なのか、結局のところ誰一人と仲良くならなかった。例えば、壱劇屋の西分さんなんて、この頃に出会って、僕の作った『珈琲が冷めるまでの戦争』に出ていただいて、この間の突劇金魚で共演もしているのに、未だにエグイくらいの距離感が保たれている。「この頃」と「今」に恐ろしいほど差がない。こんなことってあるのか。大熊さんについては、勝手に僕がネットで悪口を書いたりしたので、勝手に僕サイドで変な感じになっているまま、その変な感じが「常態」になるという不可思議な現象が起こっている。ただこれからも、大熊さんが嫌なやつであるということだけは推していきたいと思っている。無名劇団の島原さんと大熊さんの一件は全部大熊さんが悪いということは、スペドラの歴史に刻んでおこうと思う。僕が、責任を持って刻んでおこうと思う。なぜ僕が刻むのか。それはもう、頭がおかしいからだと思う。

「俳優が直接接客するというサービスとか、なにか意図があって俳優が接客していたならすんません、上記の文章は戯言としてください。」なんてお供え物みたいな言葉でチャラにできると思うなよ。「そうではない」と決めつけて、長々と文章を書いたくせに。最後にチョロっとお茶を濁して好感を持たれるのは、この世界で僕だけだ!

(※何が何だか分からない方へ

http://spacedrama.exblog.jp/25926667/

上記のリンクに、無名劇団『無名稿 機械』の感想を大熊さんが書いています。この内容に対して、無名劇団の島原さんが「劇団員による接客は、我々の想いだ!スペドラは、死ぬほど好きだ!」と反論。この時僕は、騒動の全貌を知るより早く「何があったか分からんけど、大熊さんが悪い!」と言って走り回る役を演じました。頭が湧いているからです。)

しかしこの感想ブログ、当時は大いに楽しんだが、やはり今読み返すとなんだか恥ずかしい。よくもまあ偉そうにぺらぺらと色んなことを書いたものだと思う。とはいえ、いつだってそうなのだ。どうせこの文章だって、数年後には恥ずかしい。あんなに一所懸命考えて作った演劇作品ですら、恥ずかしくてたまらないんだ。恥ずかしくなることを恐れていたら、何にも書けなくなってしまう。しかしこの文章、いつまでネットに残るのかな。今回のスペドラが終わってひっそり消されてしまうとしたら、それはそれで寂しいね。

劇的☆ジャンク堂は、今は活動休止中かな?
ちなみに僕は、主宰の五味たろうさんをネットで観察している。
http://master-style.officialblog.jp/
↑これは、五味たろうさんが何かよくわからないことをやろうとして、止まっているもの。
@nikkan_1p
↑これは、五味たろうさんが毎日1ページずつ小説をあげると言って、全10ページすら達成できずに、今まさに死につつあるツイッターアカウント。

なんなんだろう、この人。当時、「劇団員だけで公演を打つ」という目標を達成して、わんわん泣いていた。こっちはそんなのとっくに達成して、今でも続けている。イライラするんだよな、見ていて。この人は「恥ずかしい」をもう少し覚えるべきじゃないか。最近は、ネットを通しての彼しか知らないけど。当時、脚本を書いたバケツさんは、今、横林大々として小説のイベントをしている。「即興」と「小説」は合わないだろ、と思っているので、ぶっちゃけそのイベントには興味がない。でも、横林さんは好きだ。大喜利も楽しい。でも、五味たろうさんは、なんだかイライラしてくる。だったらチェックするなよって話だけど、バカヤロー、俺たちはspace×drama2013に出たんだぜ。

おい、五味たろう。スペドラが終わるぞ。スペドラが、終わるぞ。演劇祭が、また一つ終わるぞ。なにやってんだ、てめー。数々の大言壮語はなんだったんだ。ぜってー駆け付けろよな。

当時東京ペンギンの裕本さんは、片岡さんにブログでボコボコにされていた。作品をまあまあ酷評されていた。この間、王子小劇場で公演を打ったので「オラァ!」と僕もボコボコにしてみたかったが、作品の出来がイマイチで、僕がボコボコにされてしまった。『戸惑えよ』公演終了後、こっそり裕本さんに「全然面白くなかったですか?」と聞いて、「全然面白くないことはなかったよ」と返してもらったくだりが、ここ最近で僕が一番思い出し泣きしそうになるシーンです。

作品の出来がどうかなんて、実は作り手が一番知ってる。裕本さんはあの瞬間、明確に僕を「慰めて」くれた。励ますでも批評するでもなく、慰めてくれたのは、やっぱりスペドラで出会っていたからのような気もするんだよね。慰められて初めて気づいたんです。「……あー、俺、慰められたかったのか」って。言葉はね、「このレベルは山ほどいる」とか「東京で評価されている劇団の水準には達していない」とかだったんだけど、内容じゃなくってさ。言い方がさ、表情がさ、僕を慰めていたんだよ。先輩としての、東京に住むものとしての、劇場のスタッフとしての言葉を吐きながら、言葉は言葉として置きながら、慰めてくれたんだぜ。絶対に誰にも見られないところでこっそり泣いちったよ。まだ記憶に新しいから、書く気もなかったけど。書いちゃった。ちくしょう。可哀想なのは俳優なんだよ。俺が泣いてどうする。精進だ、精進。

最初から慰め合うような関係はまっぴらだけど、数年後のそれは悪くない。

っていうか慰め合ってねーし。俺が慰められただけだし。

私とスペドラ。

スペドラは、知らん。良くわからん。そういうところで騒ぐのは五味たろうさんみたいなタイプだろう。だからぜひ騒いでほしい。感謝感激を伝えたり、「なんで終わるんですか!?」と吠えたり。僕はそれを眺めて、「うるせー…」と思っていたい。僕はスペドラがあろうとなかろうと、作品を作る。あって、良かった。あったから、いろんな人と出会えたし、無料で公演も打てた。でも、なかったらなかったで、なんかやってたんじゃないかな。だから、「あって、ラッキーだったな」と思う。逆に言うと、扇町ミュージアムスクエアが「なくて、アンラッキーだったな」と思う。バブルを過ごせずアンラッキーで、戦争がなくてラッキーだ。震災があってアンラッキーで、火事を水で消せる時代でラッキーだ。

運営サイドからすると、継続するために尽力したり、色んな思いで携わっている仕事を「ラッキー」で片づけられるのは不愉快だろう。でも、どこまでも関係なくあってやれ、とも思う。小劇場界の盛衰に、劇場の運営事情に、どこまでもどこまでも関係なくあってやれ、と思う。「んなもん知らねー!」で俺たちが作品を作るから。俺たちは、作品を作るから。「スペドラ?いつの話だよ?」って顔で、俺たちは作品を作るから。すべてのラッキーとすべてのアンラッキーをガン無視して、俺たちは作品を作るから。

「人と人をつなげる場」だろうがなんだろうが、俺たちは作る。作ってりゃ、つながる。つながりは、目的じゃなく結果。そう思って作るのが、俺たちの役目。

ゴーマンかましてよかですか?
スペドラの運営に最も取り組まず、
スペドラに最も愛情がなく、
スペドラをすぐに忘れたとしても、
「私とスペドラ」じゃない。
この、私の生き様そのものがスペドラなのである。

(了)

P.S.吾輩、一人称使いこなし過ぎ

福谷圭祐・匿名劇壇
space×drama2013・2014参加

福谷圭祐プロフィール

劇作家・演出家・役者
1990年7月28日生まれ
リコモーション所属

【主な受賞歴】
「悪い癖」2016年 OMS戯曲賞 大賞受賞
【主な出演作品】
壁ノ花団「ヤングフォーエバー」「そよそよ族の叛乱」
iaku「Walk in closet」「エダニク」
突劇金魚「僕のヘビ母さん」
【主な外部脚本提供】
関西テレビ「環状線ひと駅ごとの恋物語-Part2-」station1鶴橋「優しい追跡者」
劇団Patch「森ノ宮演出家連続殺害事件」
futurismo「珈琲が冷めるまでの戦争」

匿名劇壇 公演情報

匿名劇壇第九回本公演
『レモンキャンディ』
大阪公演
5/18~22@シアトリカル應典院
東京公演
5/26~29@花まる学習会王子小劇場

匿名劇壇ホームページ

http://www.geocities.jp/doryokukurabu/